はちみつはミツバチが花蜜を巣に持ち帰り、巣房の中でゆっくりと熟成された天然の甘味です。巣の中では働きバチたちが羽を奮わせるようにして空気を一定の温度に保ち、花蜜の水分を飛ばし、ミツバチが持つ特有の酵素が加わると、長期保存が可能なまでに熟成されます。また花が咲かない冬は巣の中で春を待ちます。秋に蓄えられるはちみつは、ミツバチにとって冬を越すための大事な保存食になるわけです。

女王バチ発見
中央にいる比較的身体の大きい(長い)蜂が女王バチ

ミツバチは熟成されたはちみつに蜜蓋(巣を作るロウの成分。蜜ろうと呼ぶことが多い)で蓋をしますが、我々はこの蓋を丁寧に切り剥がして、遠心分離機を回して巣からはちみつを採集します。なぜ遠心分離機を使うかというと、巣房を壊さないよう形を残した巣を返してあげたいからです。ミツバチにとって巣作りはとても大事な作業です。人間はその邪魔をしたり、ましてや壊してはいけません。巣房は貯蔵庫であり、赤ちゃんミツバチの揺り籠でもあるからです。

蜜蓋を剥がす様子
蜜蓋を剥がす様子。
後から採蜜しようとミツバチから隔離した巣枠あるある?既に結晶してます。

働きバチの多くは雌です。またその寿命は30~40日ほどと言われます。若いミツバチは幼虫の世話やはちみつ作りといった巣の中で働き、生後2~3週間経過した壮年のミツバチが巣から飛び立ち、空を駆け、花々を巡り、はちみつの素となる花蜜を持ち帰ります。ちなみに寒い冬の間、巣箱の中でじっと春の訪れを待っている間は長生きすることができます。先にも述べたミツバチがはちみつを保存食として集める習性は、蜜源植物がおかれた環境をはじめ、まさに厳しい冬を生き抜くための知恵といっても過言ではありません。

花粉団子とミツバチ
花粉団子とミツバチとちょっと終わりかけの花

はちみつの多くは蜜源植物の名前、花の名前を元に命名されています。1種類の花の名前が付けられたはちみつを単花蜜といい、1種類の花の名前が付けられないはちみつを主に百花蜜と呼んだりします。なぜ、1種類の花だけのはちみつが採れるかというと、ミツバチの習性を利用しています。多くはセイヨウミツバチ特有の訪花行動としても知られますが、同じ女王バチから生まれた兄弟…姉妹バチ達は、皆がそろって同じ花に飛んでいく習性があるからです。中には独特な舞い方で、蜜源となる花の在り処を仲間に教えるための、さながら御輿の上の旗振り役もいたりします。

8の字ダンス
ちなみにですが。雄バチもいます...が働きません(繁殖期のみです)。雄バチは女王バチとの交尾のためだけに存在し、交尾を終えると巣から追い出されます。夏の炎天下の下、飛ぶことなくトボトボ暑そうに歩いているミツバチは、追い出された雄バチの可能性があるのでちょっと、優しく見守っていただければ幸いです。
歩く雄バチ

また女王バチは働きバチと比べて長く生きます。寿命が2年とも3年とも言われ、暖かくてお花が咲いている時期は毎日のように卵を産み、その数1000個以上といわれ、ほぼ女王バチ自身の体重と同じです。そのパワーの源がローヤルゼリーと言われます。

女王バチは家族が多くなると、いっぱいになった巣の半数におよぶ蜂をお供として引き連れて巣立っていきます。巣立った先で新たらしい城を作るわけです。これを巣別れとか分蜂(ぶんぽう)と言ったりします。そして女王バチが巣立った古城では、歴代の名家を治める新たな女王が誕生します。

分蜂と枝木
高い枝木に分蜂すると結構大変

四季折々の花から。一匹のミツバチがその短い生涯をかけて集めることのできる蜜の量は、わずかティースプーン1杯(5mlほど)にも満たないといわれ大変希少です。その一生で訪れる花は少なくとも15000を超え、飛行距離は2500キロメートルにも及ぶといわれます。

蜜蓋とミツバチ
蜜蓋に舌をのばすミツバチ

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